東京地方裁判所 昭和47年(借チ)2016号・昭47年(借チ)2004号 決定
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〔主文〕1 申立人に対し、別紙目録(二)記載の建物の所有権及び同目録(一)記載の土地に関する賃借権を相手方に譲渡することを命じ、右譲渡の対価を金二九七八万円と定める。
2 申立人は、前項の対価の支払を受けるのと引き換えに、相手方に対し、別紙目録(二)記載の建物につき、所有権移転登記手続をし、かつ、右建物の明渡をせよ。
3 相手方は、第二項の登記手続義務及び建物明渡義務の履行と引き換えに、申立人に対し、第一項の譲渡対価の支払をせよ。
〔決定理由〕……鑑定委員会は、本件土地の更地価格を五三四七万七、〇〇〇円(3.3平方米当り八三万円)、借地権価格をその七〇%の三七四三万三、〇〇〇円本件建物の価格を二二万円と評価し、権利金及び更新料の授受がなかつたこと並びに地代が極めて低額であることを理由に名義書替料(借地権譲渡承諾料)を借地権価格の一八%とし、申立人が本件建物及び本件借地権を売り急いでいることを考慮し、相手方の買い受ける本件借地権価格を右の通常の借地権価格の一〇%減とし、譲渡対価を右減価による借地権価格から名義書替料を控除し、これに建物価格を加えた金二七一七万三、〇〇〇円をもつて相当であるとする。<中略>
賃貸人が借地上の建物と借地権を買い取る場合の対価は、建物価格と借地権価格との合算額から名義書替料相当額を控除した額とするのが一般であり、鑑定委員会もこの立場に立つているが、鑑定委員会が本件の場合の名義書替料を借地権価格の一八%としたことについては首肯しがたい。鑑定委員会は、名義書替料を借地権価格の一八%とした理由として、権利金及び更新料の授受がなかつたこと並びに地代が極めて低額であることを挙げているが、申立人が本件土地を賃借した昭和二三年当時本件土地附近において権利金の授受は殆んどなかつたと見るのが常識であろうし、また、いまだ一回も更新時期がなかつたのであるから、更新料の授受がなかつたのは当然のことであり、なお、一般論としても、権利金、更新料の授受が名義書替料に影響を及ぼすとする考え方は、借地権設定の後に権利金の請求権を認め、当事者の自治に委ねるべき更新料の授受を第三者が当事者に強制することとなり、不当といわなければならない。
鑑定委員会は、本件土地の地代は、近隣の実際の地代を参考に月額六六四八円(3.3平方米当り一五〇円)に改めるのを相当とするとする。この地代と較べると現在の地代月額三〇〇〇円は極めて低額であり、このことは、相手方が買い取るべき借地権価格に反映すべきものと考える。すなわち、相手方が本件土地を第三者に借地権付のままで売却する場合、代金(投下資本)に対する利潤は地代から固定資産税及び都市計画税等の諸経費を控除した純地代と見るのが経済的に合理的であるので、地代の如何は投下資本たる代金に差をもたらすことになる。本件土地の地代を通常の地代(月額六六四八円)とした場合と現在のままの地代(月額三〇〇〇円)とした場合の右代金の差は、諸経費は同額であるので、これをNとし、資本利回りを年六%とすると、
(6,648円×12−N)÷0.06−(3,000円×12−N)÷0.06
の式から求められる一三二万九、六〇〇円となり、地代が低額であることによる申立人・相手方間の内部的土地価格は、前記の更地価格五三四七万七、〇〇〇円から右一三二万九、六〇〇円を差し引いた五二一四万七、四〇〇円と見るのが相当であり、借地権価格はその七〇%の三六五〇万三、一八〇円となる。鑑定委員会の意見により売り急ぎ減価率を一〇%、名義書替料を通常の例により借地権価格の一〇%として相手方の借地権買受価格は二九五六万七、五七五円という数値になるので、不動産の取引であるから万円未満を切り捨てて二九五六万円とし、これに建物価格二二万円を加えた二九七八万円を譲渡対価と定めるのが相当である。
本件の場合、譲渡対価の支払と建物所有権移転登記手続義務及び建物明渡義務とを同時履行の関係とするのが相当である。 (小山俊彦)
目録<略>